瞑想というと、いぶかる人もいるようですが、古代から伝わる健康法です。また、集中力などを高めるためのメンタル・トレーニング法でもあります。仕事の成果を高める方法としても昔から活用されてきました。最近は、静かに心を集中させ、迷いの心を捨てることでストレスケアや自分を見つめ直すきっかけになるとして、世界的に人気を呼んでいます。

■特定の宗教の専売特許ではない

阿字観、観想念仏、キリスト教の祈りなども、広義では瞑想になります。ただ、瞑想は特定の宗教の専売特許ではありません。ストレスや負の感情のケアのために取り組む一般の人も多いです。

科学的な見地からも、瞑想状態に入って心が落ち着くと、一定の周波数の脳波が出ると裏付けられています。瞑想をしていると、脳波が心身医学のいう「α(アルファ)波」になり、適度なリラックス状態に入って集中力が高まります。

■ストレスに強くなる

最先端の学術研究では、瞑想を実践するとストレスに強くなることも分かっています。

米ハーバード大学医学部のハーバート・ベンソン教授らの研究チームは、瞑想やヨガなどのリラックス法の実践者と、一般の人たちの遺伝子を解析し、比較しました。その結果、実践者は、ストレスに対する身体反応に影響を及ぼす遺伝子の活性化パターンが、一般の人たちと異なるという傾向が確認されました。つまり、瞑想をするとストレス耐性が根本的に高まるのです。

■米Googleやスティーブ・ジョブズ

瞑想は、21世紀に入って世界的なブームになりました。米Googleなどアメリカの著名企業が人材開発に導入し、積極的に研修に取り入れたことが普及の大きなきっかけとなりました。また、アップルの共同創業者スティーブ・ジョブズが瞑想を熱心に行っていたことも、瞑想人気を後押ししました。

今では経済界の多くの人たちが、瞑想をすると集中力が増し、生産性が上がると考えています。ただ、会社として瞑想を取り入れることのメリットは、パフォーマンスを高めることにとどまりません。従業員が目先のことだけでなく、より大きな目標に向かって頑張れるような環境づくりにもつながるのです。

■実は日本人の伝統でもある

いわゆる「禅」も瞑想の一種です。禅とは精神を一つの対象に集中し、その真の姿を知ろうとするアプローチです。それを「座」して行うことから、「座禅」と呼ばれるようになりました。古代インドでは、心の安定・精神統一などを達成するために行われてきた修行の一つでもあります。

お釈迦様が座禅によって悟りを開いたことから、仏教の修行法の一つとしても取り入れられました。それが、中国そして日本に伝わったとされています。以来、座禅は日本の伝統の一つとして定着してきました。

■バブル時代の六本木で

日本経済がバブル期に入った1980年代後半には、特殊な機械を使って瞑想状態に入る会員制ジムが東京・六本木などに登場し、マスコミで話題となりました。

これらのジムでは、専用のゴーグルとヘッドホンをつけてリクライニングシートで目を閉じます。すると、ゴーグルの発光ダイオードが光り、網膜に様々な模様が描かれました。さらにヘッドホンからも光の点滅と同周期の電子パルス音が流れ、慣れるにつれて意識が薄れた感じになりました。視覚と聴覚の双方からの刺激で脳波を落ち着かせ、リラックスさせる、というシステムでした。

今では廃れてしまったシステムですが、いつの時代も、瞑想世界へのニーズは高いということです。

■呼吸と自律神経

瞑想の際に一番のポイントになるのが「呼吸」です。深い呼吸をしながら瞑想をすると、自律神経系の副交感神経が活発になります。同時に、緊張したときに優位になる交感神経が鎮まります。これにより、ストレス状態から抜け出しやすくなるのです。

呼吸で得られる酸素は、生物の命の源であり、自然界の産物でもあります。生物の命は地球全体の生態系、太陽、宇宙につながっています。

■地球との一体感

私たちが呼吸で新鮮な酸素を取り入れるのは、肉体的なエネルギーをつくるためだけでなく、地球・宇宙との一体感を得るためでもあります。それは、瞑想の目的のひとつでもあります。

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう